つれづれコラム

忘れてはいけない観光商品の特性(その2)

投稿日:

私たちが扱う観光商品には、誘客や販売を行っていく上で絶対忘れてはいけない特性が2つあります。その1つが「想起と消費のタイムラグ」です。今回考察するもう1つの特性は、前記のタイムラグと対になる部分で、国内旅行者、インバウンドに関わらず効果的なプロモーションを行っていく上で、とても重要な特性ですので、改めてご確認してみましょう。

忘れてはいけない観光商品の特性(その1)

距離は価値、移動はコスト

観光商品の重要な特性、それは「消費地への長距離移動が発生すること。」です。物を購入する場合でも、その商品を販売している店舗へ足を運ぶ必要がありますが、通常はほとんどの商品の消費は自身の生活圏内で行われる為、購入をする為の移動距離はあまり長くはなりません。現在ではインターネットを使えば、どんなに遠くで販売されている商品も取り寄せることが出来ますので、多くの商品が自宅で購入(消費)出来るようになっています。

しかし、観光商品は「非日常」や「感動」を扱っている為、消費は自身の生活圏外で行われるかたちとなり、必然的に消費地は遠方となります。この「消費地までの距離(移動)」が観光商品を販売する上で重要なポイントになります。

例えば、自宅近くのスーパーでティッシュが300円で販売されており、20km離れた隣町のスーパーでは、全く同じティッシュが200円で売られていたとします。価格が安い隣町のスーパーへ行く方、近くのスーパーで購入する方と別れるかと思いますが、それはなぜでしょうか?全く同じ物を購入するのであれば、通常は誰でも安い方を選ぶはずです。しかし、そこに距離がある場合はどうでしょう。移動にかかる時間や交通費などと、価格の差を考え、どちらで購入するのが良いか検討されると思います。そこから分かるのは「距離は価値、移動はコスト」だということです。 隣町のスーパーの価格は、200円ではなく「200円+距離=〇〇円」。 近くのスーパーの価格は、300円ではなく「300円-距離=〇〇円」なのです。

観光商品は、その個人の主観や価値観に大きく左右される「距離」という相対的な価値に依存してしまっている事を十分意識し、この距離の壁をどう取り除くのかを戦略的に考えていかなければ来訪者の増加は見込めません。その心理的な壁(距離)を越える為には、地域の地理的な条件などにより、さまざまな案が考えられますが、共通して言えることは、距離のコストを上回る価値を提供することです。

ある有名観光地と無名観光地を比較した際に、お客様の満足度は無名観光地の方が高いのに、有名と無名に分かれてしまうのは、単純に首都圏からのアクセスの違いだけだったりすることも非常に多く見受けられます。現地までのアクセスのし易さという価値が、総合的な価値を大きく引き上げて、来訪者数や知名度にまで影響を与えているのです。逆に言えば、アクセスの悪さが価値を引き下げてしまっていると言えます。 ただ、観光地を移動することは不可能ですし、交通インフラの整備も一朝一夕に行う事は出来ませんので、その移動距離やアクセス状況も含めた価値を、観光地の基本価値として捉える事が必要です。

距離の壁を越える

地方の観光地がこの距離の壁を越える価値の与え方としては、大きく分けて下記の3つが考えられます。

  1. 独自性を強める
  2. 周囲と協力し広域での価値の創造
  3. 移動自体に価値を与える

いずれの考え方も有効ですが、今後の特に重要になってくる取り組みは2.です。 施設などが単独で個性を強めて価値を創造して行くこともとても重要ですが、他の地域にある同業態の施設との比較となってしまいがちです。しかし、さまざまな業態が連携し合い生み出した価値は多様性に富み、結果的に他とは比較の出来ない独自性を生み出すことが可能になります。

視野を広げることで、独自性と価値を創造する

近くの観光地や施設や体験イベントなどに興味をもっている観光客に「ほんの少しだけ足を伸ばせば、こんなに素晴らしい場所があるんだよ。」と言うことを伝えてあげる事も効果的です。すでに近くの観光地に興味を持ち、距離のハードルを越えてきている「来訪の見込性の高い方々」へ向けて情報を届けるのもプロモーション効果の拡大には欠かせない考え方です。マーケティング用語で言えば、関連商品をお客様に促すクロスセルです。「知っている観光地×知らなかった観光地」こんな小さな事でも、地域の新しい価値を創造することに繋がります。言い方は良くありませんが、地方にとっては近隣※の有名観光地を利用するくらいの気持ちも必要です。 観光庁も地域力の向上の為、日本版DMOの形成を呼びかけており、地域内での繋がり方が非常に重要になってきています。

※FIT(外国個人旅行者)が対象の場合は、各種交通機関を使用し1~2時間程度の移動距離は近隣と考えても良いでしょう。

忘れてはいけない観光商品の特性(その1)

-つれづれコラム
-, ,

Copyright© お得で賢いホテル旅館の選び方と使い方 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.